小説「変な絵」は、2022年10月に双葉社より出版された45万部突破の雨穴さん初の書き下ろし長編ミステリ小説です。雨穴さんは独特な世界観と作品(オカルト系)でたくさんの人を魅了する登録者100万人を超すYouTuber、さらにウェブライター・ホラー作家でもあります。
「本」「音楽」「映画」が大好きな私が、50代からの視点で感想をメインに作品を紹介!!
「変な絵」を読もうか迷っている人の参考にしていただけたらうれしいです。
・作品情報
・この本を手に取った理由
・200文字あらすじ
・感想(ネタバレあり)
・「変な絵」がおすすめな人
・関連作品などの紹介
【変な絵】作品紹介
書名 | 「変な絵」 |
著者 | 雨穴(うけつ) |
出版社 | 双葉社 |
発行日 | 2022年10月23日 第1刷発行 |
ジャンル | ミステリ |
【変な絵】を手に取った理由
少し長くなってしまいますが、『雨穴』さんを知るきっかけとなったのがyoutubeの動画でした。
最初に目にしたのが「謎の部屋と弁当」。全身黒タイツの男性とも女性ともわからない不思議な白いお面を被った高い声の人物(=雨穴さん)が山の中に出現した小部屋の人物にお弁当を持っていく話。
雨穴さんの不気味可愛い感じと意味深な小道具の数々と独特な世界観にやられ、その後たくさんの動画を一気見してしまいました。
後に書籍・漫画・そして映画化(2024年3月15日公開予定)となった『【不動産ミステリー】変な家』の動画で雨穴さんの物語の流れにハマり、さらに『この絵の仕掛けが解けますか?『変な絵』 第一章』の動画を見た後、続きが気になってしまい手に取りました。
【変な絵】200文字あらすじ
夫婦のブログにアップされた5枚の絵、夫が気付いてしまった亡き妻が描いた「3枚の絵の秘密」。
息子が「お母さんの絵」をテーマに描いたのは母と子、そして窓が黒く塗りつぶされたマンションだった。何故黒く塗りつぶされていたのか?
山中、遺体で発見された高校教師。現場には折り目のついたレシートに描かれた山の風景画。彼は何を伝えようとしていたのか?
3人の描いた絵の謎は一つに繋がっていく。
【変な絵】感想 ※ネタバレあり
動画「この絵の仕掛けが解けますか?『変な絵』 第一章」を見てから小説を読むのが個人的にはおすすめです。
動画「『変な絵』 第一章」で語られる大元の話が、今回のこの小説「変な絵」で詳しく書かれているのです。
動画では「この絵の謎が解けますか?」のテロップ、雨穴さんが知人から不気味な話を聞いたところから話が始まります。雨穴さんの知人とは他動画でも登場する栗原さん。他の動画でも雨穴さんにけっこう失礼な物言いをしますが、それに負けない雨穴さんとのやりとりにクスリとさせられます。他の動画もぜひ見て欲しいですね♪
栗原さんはオカルトに詳しい設計士、動画で栗原さんが10年近く前の話と語っているので、小説内で先輩の佐々木修平が21歳ということは、大学のオカルトサークルで後輩にあたる栗原さんの年齢はいっても20歳。と言うことは、動画時点での年齢は30歳くらいですね。
小説は序章から始まり、第一章から最終章の4章で構成されています。
読了後、一番に感じたのは「悲しい連鎖だな」、でしたがラストに救いと希望を感じました。
第一章と第二章は章ごとに話がまとまっていますが、この話がどのように関連付くのかまったく理解できないため、先を知りたいがためにページをめくる手が止まらないし、文章もとても読みやすいです。
序章的なもの。心理学者・萩尾登美子が11歳の女の子が描いた絵を見せて話します。
「描画テスト」人付き合いが苦手な私が人を知るために憧れたテストでした。「文章完成法テスト」もやってみたかったですね。序章を読んで、若い頃心理学を学びたかった事を思い出しました。
第一章の登場人物は佐々木修平、その佐々木さんに変なブログがあると情報提供&謎解きをする栗原さん。名前を見た瞬間、あ!動画に登場するあの栗原さんだ!!って思いましたね。若き日の栗原さん、話し方も洞察力も変わらずですが、まだまだ毒舌ではない感じ。
謎の絵については私も佐々木さん同様、番号が謎を解くポイントまではわかりましたが、レイヤー+サイズを揃えるという思考回路は私にはありませんでした。5枚中3枚の絵の謎はスッキリ解決、残りの2枚は愛する我が子と夫が一緒にいる姿を描いた絵、その未来を見ることができないユキちゃんの気持ちを思うと辛くなります。
ユキちゃんの「誰に」と「何故」はまだ判明していません。またブログ内の文章で浮き彫りになった第三の人物も謎のままで話は二章に進みます。
第二章の登場人物は今野直美と優太。父親の武司は亡くなっています。
第二章の終わりを読むまで母子だと思っていました。なんと直美ママは64歳!!優太君は6歳と書かれているので58歳での高齢出産、閉経していなければ可能性はゼロではないですよね。
文章マジックで騙された~
優太君には本当の母親「由紀」がいたことが判明します。これは一章で出てきた「ユキちゃん」という予想はつきますよね。一つ繋がりがでてきました。
「ママ」と呼ばれている直美は後妻?それともお姑さん?そして前妻の事をかなり嫌っています。
そして二章の最期で「初老の男性」という名もなき新たな人物が登場します。
第三章の登場人物はたくさんいて、高校教師で美術部顧問の三浦義春とその妻(名前の記載がない理由は後々判明します)、美大時代からの友人「豊川」、美術部員「亀戸」、L日報社員の岩田俊介と元記者で上司の熊井勇。
山で遺体となって発見される三浦、現場には彼が描いたと思われる山の風景画。胃の未消化食物から犯行時刻は判明しますが、証拠不十分なため逮捕に至らず。その後、事件当日をたどるため山に向かった岩田が最終的に教え子の亀戸が犯人、という結論に至ります。
でもねぇ、高校生の亀戸が犯人になるほどの理由って相当の事ですよね。
なんて思いながら読み進めていました。
岩田はすぐさま警察に向かいたかったが遅い時間のため山に一泊。夜、身動きの取れなくなった岩田の足元に女性が。その人物の声は亀戸のものではなかった。
彼女が発した言葉から、三浦には「タケシ」という息子がいて、犯人は妻だったと判明します。この「タケシ」って「武司」に違いない!!また一つ繋がったぞ♪この個々に存在していた事項が繋がっていく過程大好きなんですよ。
場面は変わり第二章最後に登場した人物の名前も判明します。初老の男性は元記者の熊井だったんです。そして衝撃的な一言を直美に向かって言います。
「三浦直美」の旧姓は「今野直美」だった事と部下の岩田が世話になったと。
そうなんです!妻の名前が最初から触れられてなかった理由がコレなんですね。第三章でやっと一章からの登場人物達の関係が見え、点と点が繋がっていきます。
最終章は解決篇。登場人物たちがどうつながっているのか、どうしてこうなってしまったのかが詳しく書かれています。
直美の幼少期の話と一章の『何故』の部分が語られます。
旦那の三浦は頑固な熱血親父兼先生、昭和の時代には多いタイプでしたよね。現在ではこの教育方針はパワーハラスメントとして大問題になってしまいます
ようやくここで登場人物たちの相関図がイメージしやすくなったので、Excelで作ってみました♪わかりにくかったらごめんなさい。
説明を入れるとわかりにくくなりそうだったので、捕捉で説明。
太い黒線は三浦家一族(夫の名前消えちゃってますね。正しくは夫:三浦義春です) 細い黒線は関連のある人物 赤い←線は、豊川は直美に好意を持っていましたが、振られてしまい三浦夫婦を恨むようになります。春義亡き後も言い寄ったりしていたのであえて赤線にしておきました。
武司が社会人となり12年ぶりに再会したのは「ユキお姉ちゃん」こと亀戸由紀だった。由紀33歳、武司27歳。こんな出会いかたしたら「運命」って思っちゃいますよね。
武司と由紀が結婚し子供を授かるくだりは第一章で語られていますが、そこで栗原さんが言っていた第三の人物とは直美だったことがわかります。
3年後、武司は絵の意味することを理解します。最後に直美に向けたメッセージ「許せないが愛し続ける」。同じくらい二人の事を愛していたが故、悲しい結果になってしまいました。私が武司だったら直美を愛し続けることはできないと思います。
そして序章で登場した心理学者・萩尾登美子が若かりし頃の診断が間違っていたことに気が付きますが、この手の判断って本当に難しいと思います。最愛の武司が亡くなった今、直美に同じ絵を描かせたら、と彼女は思いますが、私も見てみたいと思いました。
栗原さんの登場は第一章のみだったのか~と残念に思いながら読み進めてました。事件後に入院していた熊井ですが、癌が再発していることを医師に告げられます。そしてある日、隣に足に包帯を巻いた青年が入ってきます。
彼といろいろ話すようになり、熊井が癌の手術を受けないと話をすると青年は「やるべきことがある」、それは直美の孫「優太」が幸せな人生を手に入れられるよう面倒を見てあげることだと言います。そして直美のもう一つの余罪を示すブログを教えることで熊井にとっては最後の大スクープをプレゼントできると。
あ、この青年栗原さんだ。
最後までこの青年の名前は明かされませんが、奇妙なブログを見つけた事、真相が気になって調べている事、そして熊井にブログのタイトル「七篠レン 心の日記」で今野武司であることのアナグラムの解説、大学サークルの先輩にブログの真相を気持ちよく話すためと言う青年、絶対栗原さんに間違いない!!!栗原さん以外ありえない!!!
それにしても足に包帯って何したんだろう?こういうのもまた他の小説や動画で触れられるのだろうか?それはそれで楽しみの一つでもありますね。
エピローグ的な2015年6月事件後の話。優太の同年代の米沢美羽家にて、優太に元気になってもらいたいとバーベキューに招待する。優太は初老の男性と一緒だった。そう熊井さん、手術して優太の面倒見てるんですよ。
最期の文章で米沢父はおいしいところ総ざらいで持っていっちゃいます。
子供は大人以上に悲しみや不安に敏感でそのことを隠そうとするが、でも人生には辛い事と同じくらい楽しい出来事や幸せな時間があることを伝えたいと明るく楽しくバーベキューする米沢父。
そうなんですよね、悲しい事や辛い事、不安なことはたくさんあるけれど、確かに楽しい事や幸せな時間があることは確か。それは大人である人たちが伝えてあげる事なのかもしれないです。
作られた話とは言えど、やっぱり救いを感じるラストは読み終わった後の感情が違います。
若い時は救いのない話も好きでしたが、リアルな生活が暗いニュースが多いので、小説の世界くらいはラストは希望があるものがいいですよね。
【変な絵】こんな人におすすめ
叙述トリックのミステリーが好きな人におすすめします。
パズルのピースが埋まっていく感じも楽しいですし、文章も読みやすいので本が苦手な人でも読みやすいのではないでしょうか。栗原さんに負けないくらいの洞察・推理をして楽しむのもいいと思います。私は謎解きは得意ではないので、純粋に話を追う形で楽しみました♪
もちろん雨穴さんファンだったら文句なしにおすすめしちゃいます。
読んでいて思ったのが、「母親」になるのはどういう感じなんだろう?でした。直美が愛するものを守るために起こしたたくさんの事件、ユキちゃんに関しては「母親になりたい」がためにやってはいけない賭けをして成功しますが、独身には理解しがたい事ばかりでした。
【変な絵】関連
ブログ「七篠レン 心の日記」
実際のブログとして存在しています。作品内であげられていない日付の日記も読むことができます。全部で146投稿されている事にもびっくりします。動画や小説と合わせて読むと楽しさ倍増なので、気になる方は見てみて下さいね。
Webメディア「オモコロ」
雨穴さんがオモコロのメンバーとしてウェブライターをしています。雨穴さんのyoutubeチャンネルでも動画は見れますが、いろいろな人の記事も読めるのでお勧めです♪
小説「変な家」
作者:雨穴
出版社:飛鳥新社
ジャンル:ミステリ
発売日:2021年7月20日
「変な家」は雨穴さんの書籍デビュー作品。70万部突破で2024年映画公開が決定しています。こちらは動画で満足してしまっていたので小説は未読。だったのですが、この記事を作成するにあたって動画「【不動産ミステリー】変な家」は導入なだけで、小説には新たな間取り図や謎があるらしいのでさっそく買いに行かなきゃ。
小説「変な家2〜11の間取り図〜」
作者:雨穴
出版社:飛鳥新社
ジャンル:ミステリ
発売日:2024年12月15日
「変な家」の第2弾も発売になりましたね。目次のタイトルを見るだけで読みたくてウズウズしてしまいます。
映画「変な家」
2024年3月15日(金)公開予定
監督:石川淳一
原作:雨穴「変な家」
脚本:丑尾健太郎
キャスト
雨男/雨宮:間宮祥太朗
栗原:佐藤二朗
柚希:川栄李奈
漫画「変な家」
原作:雨穴
漫画:綾野暁
出版社:一迅社
レーベル:HOWLコミックス
発売日:2023年6月16日
※2023年11月30日に「変な家(2)」発売予定
テレビドラマ「何かおかしい」
シーズン1
2022年6月1日~7月6日まで、毎週水曜24時30分~25時にテレビ東京系列で放送されたリアルタイム進行型ホラー。原案・ストーリーテラーは雨穴さん。
シーズン2
2023年4月5日~6月21日『何かおかしい 2』が放送。
上記の他、私が雨穴さんを知るきっかけとなったyoutubeチャンネル(サブがあったのは知らなかった)やX(旧Twitter)、Instagram、ブログと手広くやってますね~
まずは来年公開の映画の前に小説「変な家」購入して読まないと。映画も楽しみ♪栗原さん役を佐藤二朗はちょっとイメージと違う。もっとダンディなイメージでした(失礼)。映画なのでしょうがありませんが、雨穴さん=雨宮はやっぱりあのお面を被って欲しかった。
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